Book


ここでは私が読んだ本(主にミステリ)についての感想をアップしていきます。
現在12作品の感想が公開されてます。※左フレームが出てない人は コチラ からトップページへ

『神様ゲーム』 麻耶雄嵩 ★★★★★★★★★

★あらすじ

小学4年生の芳雄の住む神降市で、連続して残酷で意味ありげな猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に、「ぼくは神様なんだ。猫殺しの犯人も知っているよ。」と明かされる。大嘘つき?それとも何かのゲーム?数日後、芳雄たちは探偵団の本部として使っていた古い屋敷で死体を発見する。猫殺し犯がついに殺人を?芳雄は「神様」に真実を教えてほしいと頼むのだが……。

★感想

昨年刊行された『螢』より断然おもしろい。麻耶の魅力といえば『夏と冬の奏鳴曲』に代表されるような、積み上げた世界観を最後の最後で一気に突き崩す衝撃的なラストだが、今回はその世界と言うのが“子供たちの世界”なだけにその残酷さがより際立っている。

『螢』の時はかなりとってつけたようなラストシーンだったので興ざめであったが(それでも麻耶的なスタンスは保っていた)、『神様ゲーム』はそれまでの世界の構築が上手く、その破壊の仕方も『夏と冬〜』を彷彿させるほどインパクトがある。

これまでの作品ではそういった不条理な展開は原因がなく、あえて言うなら“作者”という“神様”が登場人物にそういった展開を与えていたというのが私の印象なのだが、この作品には自ら“神様”を名乗る鈴木太郎という少年が登場する。“作者=神様”の存在は作品の枠の外にあり、その真偽は疑い得ないものだが、鈴木少年は本当に“神様”なのかどうかは読者が判断するしかない。作中では主人公が彼のことを“神様”と確信しているのだが、本当に“神様”なのかどうかは地の文ではあらわれず、その判断はあくまで主人公の主観に過ぎない。

こうした“神様”の存在の仕方の変化が、物語のメタレベルにおいて消化することにおいて、これまでの麻耶作品とは少し違った示唆を与えているのではないだろうか。これでまた麻耶ワールドが一つ味わいを増したかと思うと、また今後の著作展開に目が離せなくなる。

かなりコンパクトにまとめられているが、これまでの麻耶の魅力を十分に盛り込んでいるのではないだろうか。やはり常識的な感性を吹き飛ばしてしまうのが麻耶の真価だろう。

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『恋するA・I探偵』 ドナ・アンドリュース ★★★★★★☆

★あらすじ

健気でチャーミング、でもちょっと傷つきやすいチューリングは女の子型人工知能。ネットワーク上のあらゆるデータにアクセス可能な彼女は、顧客の検索を手助けするリサーチャーとして大人気だ。だがある日、彼女を作ったプログラマーのザックが突然失踪する。彼に密かな恋心を抱くチューリングは名作ミステリを読み読み探偵術を覚え、彼の行方を追いはじめるが…

★感想

探偵役の主人公が感情をもったAIっていうのだからまずビックリ。しかもストーリーは本格スリラーで二度ビックリ。倫理的で聡明な女の子AIが活躍って、ともすればライトノベルかと思ってしまうがさにあらず。

AIゆえに足を使った捜査は不可能なので協力してくれる人間に指示を与えて、自分は安楽椅子探偵として活躍する。この点が、作中でドナが自らをネロウルフに喩えている通り、しっかり構成が出来ているのが良い点。

また、登場人物がとても魅力的で、主人公のチューリング・ホッパー(名前からしてパロディですね)は超優秀なAIなのに人間よりも人間らしく、コピー係のティムにいたってはチューリングのことを人間だと思って疑わない。悩んだり恋したりする姿はとってもチャーミング。おまけに彼女の情緒機能のためにインプットされているのはなんと古今東西の様々なミステリ! 

脇役もハードボイルド探偵にあこがれるティムや、モールス信号からPCの組み立てまでやってしまうオールドミスの秘書モードなど個性的で愛着が湧いてくる。こうした人物のユーモアとウィットに富んだ会話の掛け合いもおもしろく、素直に楽しめるのではないだろうか。

重すぎず軽すぎずといったバランスが優秀な佳作。すでに原著の方ではシリーズ化されているようなので、話がどう転がっていくのかが楽しみ。

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『文学刑事サーズデイネクスト1 ジェイン・エアを探せ』 ジャスパー・フォード ★★★★★★★★☆

★あらすじ

主人公を見つけなければ、物語は終わらない…… 文学史上最大の捜査が、はじまった。 事件のはじまりはディケンズだった…… わたしはサーズデイ・ネクスト、27課所属の<文学刑事>だ。元<時間警備隊>の父は、いまは時空のなかを逃げまわる身の上、最愛の兄はクリミア戦争で疑惑の死を遂げた。 わたしはといえば、昔の恋をひきずったまま、地道な捜査ひとすじ。ふだんは原稿紛失や盗作など冴えない時間ばかりで殺しとは無縁のリテラテック(文学刑事)のわたしが、いくつもの顔を持つ凶悪犯アシュロン・ヘイディーズを追うことになった。特別捜査機関の同僚の心配をよそに、わたしは単身<現場>へ向かった。

★感想

またとんでもない作家があらわれたものだ。すさまじい荒唐無稽な設定と世界観(褒め言葉)。

これがただのおバカな作品になってしまわないのは、主人公の人物像がしっかりとしていて、かつ物語の主軸を見失ってないことだろう。「それは都合良すぎるだろう」と冷静に考えるとツッコミたくなるが、そんなことを考えさせないくらい独創的な世界観に引き込まされる。

読んでてふと「マジカルランド」や「ザンス」などのユーモアファンタジーに近い感覚を覚えた。どうでもいいようなアイテムや設定にむやみに力が入ってるようなところは似ているのではないだろうか。主人公の伯父の作る発明品のぶっ飛び方はとてつもない。本の虫(ブックワーム)という“前置詞が大好物の”虫を発明しちゃったりとか、オレンジの種を切らずに数える機械とか。だんだんシリアスなんだかコメディなんだかわからなくなってくる。脱線しては引き戻しの繰り返し。

ちょっと気になるのはガジェットの細部を取り立てて煮詰めてないこと。変なものは依然として変なもののままで、その原理が説明されることはほとんどない。例えば、主人公の父親はなぜ時空を飛び越えることができるのか、悪党アシュロンはなぜ撃たれても死なないのか、など。この二つはおいおいシリーズ中に解決されるのかも知れないが、とにかくとりたてて原理が重要視されていないのだろうと思う。

たとえば佐藤哲也の『熱帯』などの著作も、同様の構造を抱えているのではないか。いわゆる奇想譚であって、そこに説明は無用と言うわけだろうか。その是非はやはり好みで分かれるだろうなあ。そう考えると不思議なのはこれが英米でベストセラーだと言うことだ。主観的にはものすごいキラメキを感じたのだが、これ日本でベストセラーはかなり難しいのでは……

とにかくシュールでヘンテコなので、そういうの大丈夫な人には猛烈にお薦め。このドタバタ感はちょっと説明せよと言われても難しい。根本的にファンタジーなんだと割り切って読まないとあまりの不条理さに頭が沸騰するだろう。

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『ある閉ざされた雪の山荘で』 東野圭吾 ★★★★★★★☆

★あらすじ

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

★感想

雪が降ってないのに雪の山荘という一見して奇妙な状況。

あらすじを見てわかるとおり、いわゆる嵐の山荘とか嵐の孤島などの閉鎖された環境で起こる事件を扱ったクローズドサークルもの。もっとわかりやすくいえば『そして誰もいなくなった』的作品。だが、実際は脱出方法も連絡方法もあるにもかかわらず、“舞台稽古”という設定のおかげで、ないはずのクローズドサークルを作り出している。心理的なクローズドサークルとでも言えばいいのだろうか。

雪の山荘ものというと私は倉知淳の『星降り山荘の殺人』や綾辻行人の『霧越邸殺人事件』が思い浮かぶが、東野はこうしたストレートな本格ミステリはおそらく性格上書かないだろう。『名探偵の掟』や『どちらが彼女を殺した』などのように古典的な設定をあえてそのまま使わずに、変化球を投げてくるところが東野らしい。

展開はまさにクローズドサークルものの王道のような展開。外部犯の疑惑、仲たがいの発生など(知ってる人にとっては)順当に物語は進む。結局、この手の作品は殺人が起こるたびに容疑者が減っていくため、最後に一工夫入れないと犯人がバレバレになってしまう。当然、本格ミステリならば犯人は意外な人物の方がインパクトがある。

その点で言うと、意外性はバツグンである。まさかそこまで伏線が貼ってあったとは中々気づけないだろう。この緻密ぶりは職人東野の本領である。ただし、一回読んだだけではイマイチそのすごさに気づけないかもしれない。是非再読をおすすめする。

東野作品は純粋な意味でのミステリは比率として半々ほどだと思うが、その中でも秀逸なほうではないかと思った。古典や新本格を多く読んでいる人ほど楽しめるだろう。じわじわを面白みがでてくるのでなるべく読み返して、スルメのようにしゃぶり尽くすと良い。


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